明日なき狼達
 建物の上空をヘリコプターが低空で旋回していた。

 時折、ホバリングをしながらサーチライトを当て、建物の周囲や中の様子を窺っている。

 児玉達は、一階から二階へと上がった。

 裏側の方は、少しばかり小高い斜面になっていて、二階からでも脱出が出来る高さになっていた。

 滝沢の部下の死体が転がる中、六人の男達は外を警戒しながら、差し込むライトに映し出されないよう、身体を低くし、敵の攻撃をまった。





(全員配置が完了しました)

「判った、こちらもオーケーだ。指示通り、奴らをこっちに追い込んでくれ」

(了解)

 言い終わるや否や、銃撃が始まった。





 児玉達は常にヘリコプターからのライトに曝されていた。

 相手に所在を知られながら闘う事程不利な状況は無い。

 ヘリコプターからも時折狙撃された。

「いいですか、むやみにこちらから撃たないで下さい。敵中突破迄弾を大切に」

 その指示を守りながら、全員が脱出する方向を窺っていた。

 敵の何人かが建物の内部に入って来たようだ。

「さあ、そろそろ来ますよ」

 言葉通り、階段の下から銃撃を受けた。

 松山が全員の最後尾に付き、援護した。

 松山が慎重に敵を狙う。

 児玉が二階の窓から外を見る。闇の中へ目を幾ら凝らしてみても、敵の影は見えない。

 どっちへ飛び出すか……

 その判断を間違えたら……

 いや、多分どっちへ向かっても地獄が待っている事には違い無い。階段の下からの攻撃は、思いの外そんなに激しくは無い。裏側の左手、西側はすぐに雑木林になっている。

 正面は散歩道なのか、細い道が延びている。

 右手の東側は、100坪ばかりの駐車場が広がっている。一見すれば、左側が身を隠す場所も多そうに見える。

 正面の道を行けば両脇から狙われ易い……

 右側の駐車場……

 一番狙われ易く、その向こうは生け垣で、この病院の私道が見える。逃げ延びるには、そこから更にフェンスや用水路を越えて、一般道に出なければならない。

 児玉は決断した。

「右側に射撃を集中させてっ!」

 一斉に銃弾が放たれた。

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