明日なき狼達
 案の定、一見四方から攻撃がされてるように思えるが、よく観察すると東側の駐車場の奥からが一番銃撃が激しい。

 次が正面。西側の雑木林からは一発の銃弾も飛んで来ていない。

 罠は林の方だ……

 児玉が先ず窓の外から地面へ飛び降りた。

 通常の半分程の高さだったから、足をくじく事も無く直ぐさま地面に身を伏せ、銃弾が飛んで来る方向へ正確な三点バーストを行った。

 次に降りて来たのは浅井だった。撃たれた腿が痛むのか、顔をしかめ、激痛に耐えている。続け様に神谷が飛び降り、児玉の横に転がって来た。

 澤村を降ろすのに一苦労した。何とか窓の外に身を乗り出させる事は出来たが、下半身に力が入らないのか、なかなか飛び降りられないでいる。

 その間、銃撃はいよいよ激しくなって来た。

 漸くタイミングを見計らって澤村を降ろす事が出来た。

「野島さん、先に行って下さい」

 松山が殿りを守ろうとすると、

「松山、俺が皆のケツを守ってやるよ。さあ、先に降りろ」

「怪我をしてる野島さんが先だ」

「此処で後先を言い争ってチャンスを逃したんじゃ先にあの世へ行った梶に顔向けが出来ねえだろうがっ!」

 野島の腕が延びて来て松山の襟首を掴んだ。

「行けっ!行くんだっ!」

 松山の身体が窓の外へ消えた。

 一人残った野島の周囲に弾が飛来し、壁や廊下のモルタルやコンクリートを砕く。

 破片が顔を打つ。

 数メートル先の階段から黒い塊が勢いよく身を乗り出して来た。

 野島のイングラムが火を吹いた。黒い塊は悲鳴も上げずに階下へ消えて行った。

 窓ガラスの破片が耳を掠め、幾筋かの傷を付けた。

 手榴弾の安全ピンを抜き、階段下に投げ込む。

 閃光と爆発音。

 悲鳴の後に続くうめき声……。

 イングラムの弾倉を探した。無かった。残ったのは拳銃が一丁と、手榴弾が一個……。窓の外では野島の名を呼ぶ声がする。

 意を決して身を窓の外へ躍らせようとした。

 激しい連続音がした。

 肩から腰に掛けて何度も衝撃を受けた。崩れるようにして野島は壁にもたれた。




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