明日なき狼達
児玉がうめき声を上げながら、微かに聞こえるかどうかの声で、郷田の名前を口にした。
「児玉さん、しっかりしてくれ」
神谷が声を上げて励ます。手当てらしい手当ては満足に出来ない。傷口の消毒は焼酎を掛ける位なもので、浅井の知り合いのヤクザも、運ばれて来た児玉や澤村の姿を見て、尻込みをしたのか、余り関わりたくなさそうな雰囲気だった。
取り敢えず包帯で傷をぐるぐる巻きにする位しか彼らには出来なかった。
「ご、郷田を……」
「郷田がどうしたんですか?しっかりして下さい」
「奴を殺らなければ、み、皆殺られて、し、しまう……」
「大丈夫です。心配しないで、郷田は児玉さんが仕留めたじゃないですか」
「た、滝沢は?」
その名前を聞いて皆無言になった。
「滝沢を、た、滝沢を仕留めに行かなければ……」
熱に浮かされたように児玉は身体を起こそうとした。
起きれる訳が無い。
常人なら息を引き取っていても不思議ではない程の重傷なのである。飲ませる薬も無い。このままでは児玉の命は間違い無く、その灯を消してしまう。
「神谷さん、児玉さんだけでも何処かの病院に運びませんか?」
松山がそう言うと、
「私もその事を考えておりました。私達では、児玉さんが自分にしてくれたような応急処置は出来ない」
二人はその事を浅井に言った。
「警察に捕まるとかを心配する前に、命の心配をするべきだ。それに、澤村の身体だって…いや、貴方自身もひどい怪我なんですから」
「確かに。申し訳無いですが、自分にはこれ以上何も力になれない……」
「ま、待て」
それ迄、話しをじっと聞いていた澤村が口を開いた。
「い、今病院なんかに行ったらそこで全員が滝沢の手に掛かってしまう……」
「澤村、しかしこのままでは児玉さんの命が危ないんだ。例え警察に身柄を拘束されたとしても、命あってこそじゃないか。こんな所で黙って死ぬなんて、児玉さん自身だって認めないぞ」
児玉の呼吸が少しずつ小さくなって行った。
その頃、表では地元のヤクザ達が一人、又一人と集まり出していた。
「児玉さん、しっかりしてくれ」
神谷が声を上げて励ます。手当てらしい手当ては満足に出来ない。傷口の消毒は焼酎を掛ける位なもので、浅井の知り合いのヤクザも、運ばれて来た児玉や澤村の姿を見て、尻込みをしたのか、余り関わりたくなさそうな雰囲気だった。
取り敢えず包帯で傷をぐるぐる巻きにする位しか彼らには出来なかった。
「ご、郷田を……」
「郷田がどうしたんですか?しっかりして下さい」
「奴を殺らなければ、み、皆殺られて、し、しまう……」
「大丈夫です。心配しないで、郷田は児玉さんが仕留めたじゃないですか」
「た、滝沢は?」
その名前を聞いて皆無言になった。
「滝沢を、た、滝沢を仕留めに行かなければ……」
熱に浮かされたように児玉は身体を起こそうとした。
起きれる訳が無い。
常人なら息を引き取っていても不思議ではない程の重傷なのである。飲ませる薬も無い。このままでは児玉の命は間違い無く、その灯を消してしまう。
「神谷さん、児玉さんだけでも何処かの病院に運びませんか?」
松山がそう言うと、
「私もその事を考えておりました。私達では、児玉さんが自分にしてくれたような応急処置は出来ない」
二人はその事を浅井に言った。
「警察に捕まるとかを心配する前に、命の心配をするべきだ。それに、澤村の身体だって…いや、貴方自身もひどい怪我なんですから」
「確かに。申し訳無いですが、自分にはこれ以上何も力になれない……」
「ま、待て」
それ迄、話しをじっと聞いていた澤村が口を開いた。
「い、今病院なんかに行ったらそこで全員が滝沢の手に掛かってしまう……」
「澤村、しかしこのままでは児玉さんの命が危ないんだ。例え警察に身柄を拘束されたとしても、命あってこそじゃないか。こんな所で黙って死ぬなんて、児玉さん自身だって認めないぞ」
児玉の呼吸が少しずつ小さくなって行った。
その頃、表では地元のヤクザ達が一人、又一人と集まり出していた。