明日なき狼達
南口の改札を抜け、246側に四人は出た。坂を上り、南平台に抜ける地下道を渡った。
「桜丘の住宅街に知り合いの店がある。そこの店長なら事情も聞かず、自分達を匿ってくれる筈です」
澤村がそう言って四人を先導した。
その店は、桜丘の高級住宅街の中にあるレストランバーであった。店はまだ営業していた。
澤村が裏口に回り、勝手口をノックした。厨房から若い男が現れた。
「さ、澤村さん……」
澤村の姿を見るなり、男は絶句した。
「何も聞かず、匿って欲しい」
男は頷いた。
「他にも居るんだ」
と言うと、男はもう一度目を見開いた。
「客は居るのか?」
「ええ、ですがもうすぐ帰します。暫く厨房で物音を立てずにじっとしていて下さい」
「すまん……」
「気にしないで下さい。やっと恩を返せる時が来たんですから……」
男はそう言うと厨房を出、店内の客に閉店の旨を告げた。
客は多少訝しんだが、店長一人で営業している店だからそういう事もあるかといったような顔で納得し、会計を済ませた。
客が帰ると、男は外のシャッターを下ろした。
「これで大丈夫です」
そう言って男は澤村達に何か飲むかと聞いて来た。
有り難かった。
ここ何時間か、水分をまるっきり摂っていない。ミネラルウォーターを全員が何杯も飲んだ。
「悪いんだが、電話を貸してくれないか」
澤村が先ず掛けた先は、妹の久美子の所だった。
(義兄さん、今何処なの?)
「それは言えない。言えばお前も危なくなる。心配しなくていいから、とにかく部屋から一歩も出るな。それと、誰が来ても入れるんじゃないぞ。例え俺からの使いだと言ってもだ」
次に掛けた先は辻の自宅だった。
(無事だったか……)
「はい。浅井や児玉さん達が助けてくれたのですが……」
澤村が言い澱んだ言葉の意味を辻は直ぐさま悟った。
(大体の事は千代菊、ではなかった加代子さんから聞いたよ。横浜の暴動騒ぎが大変な事になっておる。滝沢もいよいよだな。まあ、奴に相応しい最後を儂からくれてやる事にしたよ)
その言葉の意味の裏側に楊小龍が居た。
「桜丘の住宅街に知り合いの店がある。そこの店長なら事情も聞かず、自分達を匿ってくれる筈です」
澤村がそう言って四人を先導した。
その店は、桜丘の高級住宅街の中にあるレストランバーであった。店はまだ営業していた。
澤村が裏口に回り、勝手口をノックした。厨房から若い男が現れた。
「さ、澤村さん……」
澤村の姿を見るなり、男は絶句した。
「何も聞かず、匿って欲しい」
男は頷いた。
「他にも居るんだ」
と言うと、男はもう一度目を見開いた。
「客は居るのか?」
「ええ、ですがもうすぐ帰します。暫く厨房で物音を立てずにじっとしていて下さい」
「すまん……」
「気にしないで下さい。やっと恩を返せる時が来たんですから……」
男はそう言うと厨房を出、店内の客に閉店の旨を告げた。
客は多少訝しんだが、店長一人で営業している店だからそういう事もあるかといったような顔で納得し、会計を済ませた。
客が帰ると、男は外のシャッターを下ろした。
「これで大丈夫です」
そう言って男は澤村達に何か飲むかと聞いて来た。
有り難かった。
ここ何時間か、水分をまるっきり摂っていない。ミネラルウォーターを全員が何杯も飲んだ。
「悪いんだが、電話を貸してくれないか」
澤村が先ず掛けた先は、妹の久美子の所だった。
(義兄さん、今何処なの?)
「それは言えない。言えばお前も危なくなる。心配しなくていいから、とにかく部屋から一歩も出るな。それと、誰が来ても入れるんじゃないぞ。例え俺からの使いだと言ってもだ」
次に掛けた先は辻の自宅だった。
(無事だったか……)
「はい。浅井や児玉さん達が助けてくれたのですが……」
澤村が言い澱んだ言葉の意味を辻は直ぐさま悟った。
(大体の事は千代菊、ではなかった加代子さんから聞いたよ。横浜の暴動騒ぎが大変な事になっておる。滝沢もいよいよだな。まあ、奴に相応しい最後を儂からくれてやる事にしたよ)
その言葉の意味の裏側に楊小龍が居た。