明日なき狼達
(今何処におるんだ?)

「渋谷です。知り合いの所に匿って頂いてます」

(そこを動かん方がいい。三輪がお主を探してるようだ。それと、滝沢自身が自分の会社に居て手の者をあちこち嗅ぎ回らせておる)

 滝沢が会社に……

「辻先生、会社とはどの会社の方ですか?」

(TSコーポレーションの警備部門だ)

 TS警備保障は渋谷の宮益坂にある。

 奴は目と鼻の先に居る。

 澤村の興奮が横に居た松山にも伝わった。

(澤村君、助かった命を大切にしなきゃいかんぞ。心配しなくてもいいと儂が言っておるのじゃ。既に手は打ってある)

「判りました……」

 そう言って電話を切った澤村であったが、その表情には、新たな闘志が宿っていた。

「澤村……」

 松山がにじり寄る。

「奴の居場所が判ったんだな?」

 無言でなかなか答えない澤村の胸倉を掴み、尚も問い詰めた。

「何処なんだ、言ってくれ澤村……」

 二人のやり取りを浅井と神谷もじっと見つめている。

「既に手は打ってあると言ってます…我々は此処でじっと動かずにですね……」

「お前はそんな事を考えてはいないだろう。えっ、澤村!」

「兄さん……自分がきちんと奴を始末出来なかったばっかりにこんな事になったんです。野島さん、梶さん、それに児玉さんまで……。
 全て自分の不始末で……ケジメは自分がきちんと着けます」

「澤村、それを言うなら俺だって……黄の情報に躍らされたばっかりにこういう結果になったんだ。寿町でもそうだ。俺にもケジメを着けなきゃならない責任がある」

「お宅らいい加減任侠映画みたいな事言ってんじゃないよ。悪いが梶や野島との付き合いは私が一番長いんだ。私が仇を討たないで誰が討つってんだよ!」

 神谷が一気にまくし立てる。

 澤村の胸倉を掴んだまま、松山が囁くように言った。

「死んだ児玉さんは、俺にとっては恩人だ。それに、滝沢との係わりは俺の方が一枚も二枚も上なんだぜ。第一、今のお前の身体でどうやって奴を殺る?
 俺達年寄りの方が、これこの通りぴんぴんしてるぞ。児玉さんも最後に言っていたが、俺達の死に花を奪わないでくれ」

 目を真っ赤に充血させた松山を澤村の目がじっと見つめた。

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