明日なき狼達
乾杯
銀座の数寄屋橋の一角に、一軒のバーが新しくオープンした。
開店記念の花輪も出さず、ひっそりとオープンしたその店の看板には、
「BAR J&J」
とあった。
地下への階段を下りて店内に入ると、磨き抜かれた一枚板のカウンターに出迎えられる。本格的で硬派なバーという事で、客層は中高年が多い。
開店の一時間前になると、片足を引きずるように歩く老いたバーテンダーと、和服姿の老齢のママが階段を下りて行く。
何度かこの店を訪れた事のある客が、たまたま開店時間の少し前に訪れた事があった。店の扉を開けようとした時、その客は不思議な光景を目にした。
バーテンダーが客のいないカウンターにショットグラスを並べ、それに酒を注いでいた。
数は四つ。
そのグラスに酒を満たすと、カウンターの中に居たバーテンダーとママが、四つのグラスに自分達のグラスを当て、乾杯の仕草をした。
二人の姿を見て、その客は、まるで幽霊にでも話し掛けているかのような雰囲気を感じ、その夜は薄気味悪くなって引き返したのである。
幽霊がやって来て酒盛りをする店……
「BAR J&J」
は何時しかそういう噂が立つ店になっていた。
終わり
開店記念の花輪も出さず、ひっそりとオープンしたその店の看板には、
「BAR J&J」
とあった。
地下への階段を下りて店内に入ると、磨き抜かれた一枚板のカウンターに出迎えられる。本格的で硬派なバーという事で、客層は中高年が多い。
開店の一時間前になると、片足を引きずるように歩く老いたバーテンダーと、和服姿の老齢のママが階段を下りて行く。
何度かこの店を訪れた事のある客が、たまたま開店時間の少し前に訪れた事があった。店の扉を開けようとした時、その客は不思議な光景を目にした。
バーテンダーが客のいないカウンターにショットグラスを並べ、それに酒を注いでいた。
数は四つ。
そのグラスに酒を満たすと、カウンターの中に居たバーテンダーとママが、四つのグラスに自分達のグラスを当て、乾杯の仕草をした。
二人の姿を見て、その客は、まるで幽霊にでも話し掛けているかのような雰囲気を感じ、その夜は薄気味悪くなって引き返したのである。
幽霊がやって来て酒盛りをする店……
「BAR J&J」
は何時しかそういう噂が立つ店になっていた。
終わり