明日なき狼達
何時しか、白川静子の記事も、新聞の片隅に簡単に公判結果が載るだけの扱いにしかならなくなった。
最高裁でも、彼女の死刑判決が下され、その結果、刑が確定した。
梶が諦めた訳では無い。
彼女自身が梶に、
「先生、私絞首台の上に乗った方がいいんです。それだけの事をしたのですから。それに、このままずっと裁判が続いて、こんな所に閉じ込められっぱなしでいると、本当に気が変になりそうで……。
先生がここ迄頑張って下さった御恩は決して忘れません。自分で自分の命を絶つ勇気も無い女です。ですから……」
そこから先の言葉を遮るように梶は、
「結婚しよう!」
「……?」
「獄中結婚なんて、何も珍しく無い。僕と結婚してくれ。君がそういう気持ちで、刑に服すると言うなら、最後の最後迄僕に見取らせてくれ」
「先生……それは出来ません。お気持ちは凄く嬉しいんですけど、三人もの命を奪った上に、先生の大切な人生迄奪う事は出来ません」
「奪われてなんかいない!この先も奪われる事は無い。僕自身の心がそれを求めているんだ」
「……」
「勿論、安っぽい同情心からでも無い。君の存在を、君との関わりを失くされる事の方が、僕には、僕には……」
その時の心情は、何年経っても変わっていない。
彼女の見せる細かい仕草に変わりが無いのと同じように……
その後も、何度か婚姻届けを持って面会したが、白川静子は頑なに拒絶した。
そして、
「好きになった方が、私みたいな者に関わって行く事で、その人生が不幸になるのを見ていられる訳が無いじゃないですか……」
「今、好きな方って……」
「先生、好きです。叶う事なら、こんな形じゃない出会い方をしたかった……。
私、幼い時に両親を亡くして、ずっと施設育ちだったから、先生の事を父とか、兄みたいな存在に思えて……でも、気付いたんです。先生が結婚しようって言って下さった時に……。
大好きな人だから、本当の幸せを掴んで欲しいんです」
二人の鳴咽で面会室が埋まった。
梶は結婚は諦めた。だが、時間が許す限り、会いに来ると言った。
「友人として……それ位はいいだろう?」
「先生、ありがとう……」
最高裁でも、彼女の死刑判決が下され、その結果、刑が確定した。
梶が諦めた訳では無い。
彼女自身が梶に、
「先生、私絞首台の上に乗った方がいいんです。それだけの事をしたのですから。それに、このままずっと裁判が続いて、こんな所に閉じ込められっぱなしでいると、本当に気が変になりそうで……。
先生がここ迄頑張って下さった御恩は決して忘れません。自分で自分の命を絶つ勇気も無い女です。ですから……」
そこから先の言葉を遮るように梶は、
「結婚しよう!」
「……?」
「獄中結婚なんて、何も珍しく無い。僕と結婚してくれ。君がそういう気持ちで、刑に服すると言うなら、最後の最後迄僕に見取らせてくれ」
「先生……それは出来ません。お気持ちは凄く嬉しいんですけど、三人もの命を奪った上に、先生の大切な人生迄奪う事は出来ません」
「奪われてなんかいない!この先も奪われる事は無い。僕自身の心がそれを求めているんだ」
「……」
「勿論、安っぽい同情心からでも無い。君の存在を、君との関わりを失くされる事の方が、僕には、僕には……」
その時の心情は、何年経っても変わっていない。
彼女の見せる細かい仕草に変わりが無いのと同じように……
その後も、何度か婚姻届けを持って面会したが、白川静子は頑なに拒絶した。
そして、
「好きになった方が、私みたいな者に関わって行く事で、その人生が不幸になるのを見ていられる訳が無いじゃないですか……」
「今、好きな方って……」
「先生、好きです。叶う事なら、こんな形じゃない出会い方をしたかった……。
私、幼い時に両親を亡くして、ずっと施設育ちだったから、先生の事を父とか、兄みたいな存在に思えて……でも、気付いたんです。先生が結婚しようって言って下さった時に……。
大好きな人だから、本当の幸せを掴んで欲しいんです」
二人の鳴咽で面会室が埋まった。
梶は結婚は諦めた。だが、時間が許す限り、会いに来ると言った。
「友人として……それ位はいいだろう?」
「先生、ありがとう……」