明日なき狼達
薄目に作って貰った水割りをちびりちびりと飲んだ。
澤村から聞いた話しが、どうしても頭から離れない。
考え事をしている松山を見て、ママは主に後から来た男の方と話しをしていた。
「……そうなのよ。この辺も、再開発とかって話しが持ち上がってさ、古くからの家主さん達の中には権利を売りに出しちゃってる人も結構居るのよ。前の家主さん達とかだと、家賃とかもそんなに上げたりしなかったし、支払いが多少遅れたって待ってくれたりもしたけど、後から買い取った人達って、大概地上げが絡んでるから、その辺は容赦が無いの」
「向かい側の店もそんな関係で?」
「そう。神谷さんのとこも、その隣も。正直言うとね、うちもかなり危ないの。
私的には、その日の生活に困らない程度にお客さんが来てくれればいいの。でもそれがね……」
「暇なのかい?」
「都知事さんが歌舞伎町を浄化するんだ、みたいな感じでいろいろ頑張っちゃってるもんだからさ…しかも、この辺りを再開発して、大きなビルにするとかしないとか言っちゃったものだから、それこそ昔のバブル時代みたいにいろんな人間が食いつき出しちゃったのさ。だから、最近はお客さん達みたいな普通のサラリーマンよりも、こっち系の人がよく飲み歩いてるわ」
「ヤクザか?」
「そう、見るからにって感じのね」
ヤクザという言葉を聞くと、つい過敏に反応してしまう自分に、松山は苦笑いしてしまった。
「ゴールデン街もどんどん寂しくなって行くんだな……」
「そ、一握りの金持ちばっかり儲かって、あたしらみたいな者は皆干上がっちまう……。
ここ最近もよく新聞に名前が出る、タキ何とかっていう所が、会社から不動産からいろいろ手を出してるみたいでさ」
「タキザワグループ……」
「そう、それそれ。うちの常連さんに、雑誌社の人が居るんだけどさ、よくその会社の事を話すのよ。ネタには困らない会社だし、オーナーの事を記事に出来たら倍は本が売れるのにって何時もぼやいてるわ」
「確かに。しかし、絶対に本は出せないだろうな。本人があの世に行ってしまえば別だろうがね。まあ、それでも、オーナー本人だけじゃなく本にされたら困る輩が沢山絡んでるからな。やっぱり無理だな……」
澤村から聞いた話しが、どうしても頭から離れない。
考え事をしている松山を見て、ママは主に後から来た男の方と話しをしていた。
「……そうなのよ。この辺も、再開発とかって話しが持ち上がってさ、古くからの家主さん達の中には権利を売りに出しちゃってる人も結構居るのよ。前の家主さん達とかだと、家賃とかもそんなに上げたりしなかったし、支払いが多少遅れたって待ってくれたりもしたけど、後から買い取った人達って、大概地上げが絡んでるから、その辺は容赦が無いの」
「向かい側の店もそんな関係で?」
「そう。神谷さんのとこも、その隣も。正直言うとね、うちもかなり危ないの。
私的には、その日の生活に困らない程度にお客さんが来てくれればいいの。でもそれがね……」
「暇なのかい?」
「都知事さんが歌舞伎町を浄化するんだ、みたいな感じでいろいろ頑張っちゃってるもんだからさ…しかも、この辺りを再開発して、大きなビルにするとかしないとか言っちゃったものだから、それこそ昔のバブル時代みたいにいろんな人間が食いつき出しちゃったのさ。だから、最近はお客さん達みたいな普通のサラリーマンよりも、こっち系の人がよく飲み歩いてるわ」
「ヤクザか?」
「そう、見るからにって感じのね」
ヤクザという言葉を聞くと、つい過敏に反応してしまう自分に、松山は苦笑いしてしまった。
「ゴールデン街もどんどん寂しくなって行くんだな……」
「そ、一握りの金持ちばっかり儲かって、あたしらみたいな者は皆干上がっちまう……。
ここ最近もよく新聞に名前が出る、タキ何とかっていう所が、会社から不動産からいろいろ手を出してるみたいでさ」
「タキザワグループ……」
「そう、それそれ。うちの常連さんに、雑誌社の人が居るんだけどさ、よくその会社の事を話すのよ。ネタには困らない会社だし、オーナーの事を記事に出来たら倍は本が売れるのにって何時もぼやいてるわ」
「確かに。しかし、絶対に本は出せないだろうな。本人があの世に行ってしまえば別だろうがね。まあ、それでも、オーナー本人だけじゃなく本にされたら困る輩が沢山絡んでるからな。やっぱり無理だな……」