明日なき狼達
「そのお客さんも同じ事言ってた。タキザワ何とかってオーナーが指一つ動かすだけで、日本は右にでも左にでも動くんだってさ」
「それは余りにも大袈裟過ぎるだろう」
「あたしもそう言ったんだけどね、前にある事件をスクープしようとしたフリーの記者が居たらしいんだけど、その記者がある時期からぷっつり姿を消したんだって。そしたら一年位経って、南米のどっかの国で死体になって発見されたらしいんだって。まるで小説か映画の世界みたいな話しよね」
「以外と現実の世界の方が荒唐無稽なもんさ。その記者はどんな事件を追ってたんだ?」
「なんでも、どの出版社も絶対に扱っちゃ駄目な事件ていうか、そういうのがあるらしいの。何でも、十何年か前の警官殺しらしいんだけどね」
警官殺しという言葉を耳にし、松山は思わず身を乗り出して、話しの中に入って来た。
「すまんが、もう少し詳しく聞かせてくれないか?」
それ以上に反応したのは、もう一人の客だった。
「俺も詳しく聞きたい」
「やだ、お客さん達、二人揃って。まあ、酒を飲む場所での話しには格好のネタではあるかも知れないけどさ、お二人さんとも、お代わり注文しない?話しの聞き賃として」
二人はそれぞれ同じ物を頼み、ママの話しにじっと耳を傾けた。
「昔、警官がヤクザに殺されて、しかもその犯人が別なヤクザに殺されたっていう事件があったらしいの。それ自体はそれで解決済みになってるらしいんだけど、どうもおかしいって不審に思った人間が結構居たらしいの。何故かって言うと、ずっと元を辿ると最後には必ずタキザワ何とかっていう人間に行き着くんだそうよ。でね、当時のマスコミ関係者でその事に興味を持って調べようとした人間の殆どが、後々おかしな事になってるんだって」
「例えば?」
「殺されたとかか?」
「殺されたかどうかは別にして、失踪したり、自殺したり、左遷された人はかなり居るんだそうよ。そういった事があったんで、以来その事件は勿論の事、タキザワ何とかっていう人個人をゴシップにしようとしちゃいけないっていう暗黙の掟が出来上がったみたい」
「全てはそのタキザワ……」
「滝沢秋明……」
その男が松山にそう呟いた……
「それは余りにも大袈裟過ぎるだろう」
「あたしもそう言ったんだけどね、前にある事件をスクープしようとしたフリーの記者が居たらしいんだけど、その記者がある時期からぷっつり姿を消したんだって。そしたら一年位経って、南米のどっかの国で死体になって発見されたらしいんだって。まるで小説か映画の世界みたいな話しよね」
「以外と現実の世界の方が荒唐無稽なもんさ。その記者はどんな事件を追ってたんだ?」
「なんでも、どの出版社も絶対に扱っちゃ駄目な事件ていうか、そういうのがあるらしいの。何でも、十何年か前の警官殺しらしいんだけどね」
警官殺しという言葉を耳にし、松山は思わず身を乗り出して、話しの中に入って来た。
「すまんが、もう少し詳しく聞かせてくれないか?」
それ以上に反応したのは、もう一人の客だった。
「俺も詳しく聞きたい」
「やだ、お客さん達、二人揃って。まあ、酒を飲む場所での話しには格好のネタではあるかも知れないけどさ、お二人さんとも、お代わり注文しない?話しの聞き賃として」
二人はそれぞれ同じ物を頼み、ママの話しにじっと耳を傾けた。
「昔、警官がヤクザに殺されて、しかもその犯人が別なヤクザに殺されたっていう事件があったらしいの。それ自体はそれで解決済みになってるらしいんだけど、どうもおかしいって不審に思った人間が結構居たらしいの。何故かって言うと、ずっと元を辿ると最後には必ずタキザワ何とかっていう人間に行き着くんだそうよ。でね、当時のマスコミ関係者でその事に興味を持って調べようとした人間の殆どが、後々おかしな事になってるんだって」
「例えば?」
「殺されたとかか?」
「殺されたかどうかは別にして、失踪したり、自殺したり、左遷された人はかなり居るんだそうよ。そういった事があったんで、以来その事件は勿論の事、タキザワ何とかっていう人個人をゴシップにしようとしちゃいけないっていう暗黙の掟が出来上がったみたい」
「全てはそのタキザワ……」
「滝沢秋明……」
その男が松山にそう呟いた……