明日なき狼達
 普通電車の固い座席が、少しずつ二人の尻を痛めて行く。

 加代子はしきりにケータイで何処かと連絡を取ろうとしてるが、見てる限りではどうも上手く行ってないようだ。

「ねえ、あんた梶の知り合いの刑事と連絡とれる?」

「あの日一緒に飲んだ?」

「そう。急いで連絡取ってみてよ」

「ああ、取り敢えず梶の電話番号は知ってるから……」

 そう言って神谷は、梶の番号を押した。

「もしもし、梶さん?神谷です、その節はどうも」

 梶と連絡が取れたと思いきや、加代子は神谷のケータイを引ったくるようにして取った。

「あたし、加代子」

(加代さん、丁度良かった、いろいろ聞きたい事があったんだ)

「あたしの方がその台詞を言うつもりだったんだよ」

(新聞の……)

「そうだよ。今朝新聞に載っていた青山の事だよ」

(私もその件でちょっと関わりが出来てね、話しを聞けたらと思うんだが)

「先に刑事のケンちゃんと連絡取りたいんだ。あんたなら連絡先を知ってると思って電話したんだ。電話番号を教えておくれ」

(待ってくれ……)

 暫くして梶が電話番号を言って来た。

 加代子はその番号を神谷に教え、神谷は自分のケータイで掛けた。

「ありがとよ」

(加代さん、是非一度会ってくれ。もしなんだったら、野島の所へ俺も行く)

「弁護士のあんたが居れば、いろいろと心強いかもね……」

 神谷が、

「姐御、繋がったよ」

 と言ってケータイを差し出した。

「又後でね、あっ、加代子だけど」

(加代さん、どうしたんだ!今何処にいる!会いたいんだ、青山の件なんだが……)

「判ってるよ。あたしだっていろいろ知りたいんだ。あんたこそ今何処に?」

(知り合いの所だ。国立なんだが、来れるかい?)

「神谷、この電車、国立の近くを通るかい?」

「これ、普通だから、このまま乗ってれば国立で停車するけど」

「そっちに行けるよ。そうだね、ええと…次が高尾だから……神谷、国立迄あとどれ位だい?」

「このままなら、四、五十分掛からない」

「一時間もしないうちに着くよ」

(駅に着いたら電話をしてくれ)




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