明日なき狼達
 青山の死が見えない糸となって加代子達を紡いだ。

 国立の駅から野島に電話を入れると、5分程して一台のワゴン車が迎えに来た。運転していたのは児玉だった。

「野島さんから話しは伺っています。どうぞ乗って下さい。」

 神谷と加代子は後部座席に乗り込んだ。

 児玉の家に着くと、見知らぬ男が野島と話しをしていた。二人が互いに名乗り、挨拶をすると、男は、

「松山匡です」

 と言って頭を下げた。

 加代子は野島の横に座るなり、

「ねえ、あたし達だけで話し出来ない?」

 と、見ず知らずの者が二人も居る事に不安を隠せない様子だ。

「加代さん、大丈夫だ。実はね、この方も今回の件とはまるっきり無関係って訳じゃないんだ」

「え、じゃあ、青山の件と?」

「直接という意味では無く、大元との関わりという事なんだけどね」

「そう、信用していいんだね?」

「ああ」

「そうだ、電車の中で梶さんと連絡したんだけどさ、あの人も会いたいって言って来たんだけど」

「梶さんなら、僕の方にも電話があった。もうすぐ此処に来ると思う」

 野島の言葉通り、30分もしないうちに、梶もやって来た。

「児玉さん、こんな大勢で押しかけて申し訳ありません」

 頭を下げる野島に、児玉はにこやかに言った。

「気にしないで下さい。この家に移ってから、こんなに賑わったのは初めてかも知れない。私の事は気にせず、どうぞ皆さんで」

 そう言って児玉は茶の間の方に引っ込んだ。

 応接間には、松山を中心にして、野島と梶、そして神谷と加代子が顔を突き合わせるかのようにして話しをし始めた。

「先に、こちらの松山さんの事を話して置かなければならない……」

 野島が、松山の前歴と、石丸を刺殺した事件の経緯を説明した。

 話しの流れの中で、野島自身が当時の事件を不審に思い、滝沢秋明に行き着いた事も付け加えた。続いて話しをしだしたのは梶であった。

 一枚の写真をテーブルに置き、青山の祖母から受けた調査依頼の件を話した。

 加代子は、自分の事はそっち除けにして、身を乗り出して聞いている。

「あたしはさあ、今更お金がどうとか思ってないのさ。真相を知りたいだけ」
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