明日なき狼達
「あの、お話しの途中で済みません、部外者の私が口を挟む筋合いではありませんが、滝沢秋明が関わってるとすれば、ある手段が考えられます……」
茶の間に行っていた筈の児玉が、手に茶菓子を乗せた盆を持って入口に立っていた。
「どういう事で?」
「はい、滝沢は防衛産業とも深く関わりがありました。日本の国防は全てを自前、つまり国産でというのが建前になってまして」
「戦闘機はアメリカのやつを使ってますが……」
「F-15イーグルですね。あれは、ライセンス生産といいまして日本国内で作られてるんです」
「そんな戦闘機とかの話しはいいから、ねえねえ早く続きを話して」
加代子に促されて、児玉は話し始めた。
「純国産を建前にはしておりますが、先程のF-15のようにライセンス生産の物の中には、その企業でしか扱っていない部品等がかなりあるんです。そういった物が毎年防衛費の枠組みの中で海外から日本に入って来ます。
私が陸自におりました頃、年に何回か船便でそれらの部品や機材等が入って来てましたが、この船便に滝沢がよく密輸品を仕込んでいたという噂を聞きました」
「税関でばれないの?」
「インボイスのチェックだけで中味は殆どフリーパスです」
「もし、それが噂じゃなくて本当の話しなら……」
「金だろうが何だろうが、堂々と日本に持ち込める」
「防衛省と滝沢との繋がりは、警察予備隊として発足した当時からです。滝沢は、防衛族の中でも特別な存在でして、彼の企業が様々な分野で入り込んでますし、退職者の天下り先にもなっております。私自身、自分の部下達の再就職先として、何人も関連企業に紹介してましたから」
「ねえ、最近入って来たそういう船便とか調べられるのかな?」
「それは直ぐに判る」
「取り返せないかなぁ……」
「……」
「仮に船便が判り、その中に滝沢の密輸品があったとしても、それが姐御の金と関連した物かどうか判らないよ」
「神谷さん、正確に言うと、加代さんのお金では無いんです。国外に持ち出した金は、その殆どが年会費等ですから、本来は会員に返還すべき物なんですけどね」
「やだ、少し位はあたしの物よ。身一つで稼いだ金なんだから、どうにかならないかしら」
茶の間に行っていた筈の児玉が、手に茶菓子を乗せた盆を持って入口に立っていた。
「どういう事で?」
「はい、滝沢は防衛産業とも深く関わりがありました。日本の国防は全てを自前、つまり国産でというのが建前になってまして」
「戦闘機はアメリカのやつを使ってますが……」
「F-15イーグルですね。あれは、ライセンス生産といいまして日本国内で作られてるんです」
「そんな戦闘機とかの話しはいいから、ねえねえ早く続きを話して」
加代子に促されて、児玉は話し始めた。
「純国産を建前にはしておりますが、先程のF-15のようにライセンス生産の物の中には、その企業でしか扱っていない部品等がかなりあるんです。そういった物が毎年防衛費の枠組みの中で海外から日本に入って来ます。
私が陸自におりました頃、年に何回か船便でそれらの部品や機材等が入って来てましたが、この船便に滝沢がよく密輸品を仕込んでいたという噂を聞きました」
「税関でばれないの?」
「インボイスのチェックだけで中味は殆どフリーパスです」
「もし、それが噂じゃなくて本当の話しなら……」
「金だろうが何だろうが、堂々と日本に持ち込める」
「防衛省と滝沢との繋がりは、警察予備隊として発足した当時からです。滝沢は、防衛族の中でも特別な存在でして、彼の企業が様々な分野で入り込んでますし、退職者の天下り先にもなっております。私自身、自分の部下達の再就職先として、何人も関連企業に紹介してましたから」
「ねえ、最近入って来たそういう船便とか調べられるのかな?」
「それは直ぐに判る」
「取り返せないかなぁ……」
「……」
「仮に船便が判り、その中に滝沢の密輸品があったとしても、それが姐御の金と関連した物かどうか判らないよ」
「神谷さん、正確に言うと、加代さんのお金では無いんです。国外に持ち出した金は、その殆どが年会費等ですから、本来は会員に返還すべき物なんですけどね」
「やだ、少し位はあたしの物よ。身一つで稼いだ金なんだから、どうにかならないかしら」