明日なき狼達

積み荷

「三日後に入って来る三隻の貨物船なんだけどさ、これ扱いがマルエスになってるけど」

「ああ、それか、別々の港からこっちに向かってんだけど、同時入港は珍しいな」

「防衛省の積み荷かい?」

「多分な」

「面倒くせえなあ。俺、その日は通しなんだよな。なあ、出番代わってくんない?」

「残念ながら、用事があってね。でも、マルエスの防衛省絡みの積み荷なら、寧ろ検査なんか適当で構わないから楽なもんだぜ。税関チェックだって中味の検査は殆どしないから」

「そりゃそうなんだけどさ、マルエス扱いの時って、すげぇ気を使うじゃん、それに小煩い奴が必ず顔出して来るしさ……」

「まあ、しょうが無いじゃん。と言う事で、俺はこれで失礼するよ」

「お疲れ」

 税関事務所の机の上には、向こう一週間分の入港予定リストがあった。作業員は、各データをPCに入力し、積み荷の検査手順と荷下ろしの割り振りを決める。

 三日後に入港するマルエス扱いの貨物船。厳重注意の上、極秘扱い。三隻とも防衛省が借り上げたパナマ船籍の貨物船となっていた。

 日本での受け取りは、TSコーポレーションとなっている。防衛省関係の入荷では、よく見る名前の会社だ。

 軍事用資材等の輸入に際しては、一旦民間企業を通して海外から買い付けし、それを防衛省が買い上げるというシステムになっている。尤も、現実には民間企業といっても、半官半民のようなもので、それらの会社役員は、全員が防衛省からの天下りであったり、自衛隊OBであったりする。

 TSコーポレーション。

 滝沢の持ち株会社である事は、世間一般には余り知られていない。

 児玉の自衛隊時代の部下が一人、この会社に入っていた。

 児玉はその人間と会うべく、桜木町にあるTSコーポレーション横浜支社を訪ねていた。
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