明日なき狼達
「別に野島さんから金が取れるとは思っていない。総額六千五百億円相当のダイヤモンドのうちの半分……」

「六千五百……どういう事だ?」

「今此処で詳しく話す事は出来ない。ただ、野島さん達は、情報を手に入れたと同時に、それだけの品物も手に入れられる……」

「おいおい、随分簡単に言うじゃないか」

「情報と一緒に、ダイヤモンドを手に入れる方法も教えますよ。だから、先ず報酬の件を今この場で確約して欲しいんです」

 野島は、大きく息を吸い込み、そして言った。

「判った。お前の条件は呑んだ。何だったら、契約書でも書くか?」

「それには及びません。じゃあ、今夜の七時に赤羽で。その時に全て話しますから」

「赤羽?自分の家とは正反対だな」

「個人的に借りてるセーフティーハウスなんです。僕らの仕事上、人と会うのを余り他人に見られたくないもんで…まして相手が野島さんですからね」

 野島は苦笑いを浮かべた。

 二人は店の前で別れた。

 別れ際、吉見はケータイを出し、野島に渡した。

「駅に着いたら、このケータイからこの番号に掛けて下さい。絶対に自分のケータイは使わないように。それと、一切他の番号にも掛けてはいけません」

「念が入った事だ……」

 渡されたケータイは、恐らく他人名義のプリペイドケータイであろう。或は偽造許可書で買った物かも知れない。

 吉見と別れた野島は、駅前から梶に連絡をした。

「夜も人と会うから、児玉さんの所に戻るのが遅くなるかも知れない。一応、夜の七時にその人間と会う前に電話をします。二度目の電話は、二時間後に。二度目の電話が時間通り来なかったら、私の身に何かあったと思って下さい」

 電話を切った野島は、胸のポケットに入れて置いた小型のテープレコーダーを
目の前のコインロッカーに入れ、所定の金額を投入した。

 鍵を手にした野島は、近くのデパートの文具売り場で封筒を買い、その鍵を入れた。

 その足で郵便局へ行き、児玉宛ての住所で郵送した。

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