明日なき狼達
 船長から渡されたリストを見ながら、積み荷をチェックして行った。

 幾つもコンテナがあり、それを一つ一つチェックして行くのはかなりの時間を要する。だが、吉見は初めからその荷が何処にあるかを知ってるかのように、次々とコンテナを見て回った。

 船長も最初は警戒の色を見せていたが、吉見の調べ方が簡単なチェック作業程度であったので、気を許し始たのか、野島達に冗談を言ったりして雑談をするようになっていた。

 吉見の足があるコンテナの前で止まった。コンテナの扉には厳重に鍵が掛かっている。

「これを開けて貰えませんか?」

 船長の顔色が変わった。

「あの、それはマルエス扱いですが……」

「ええ、判ってます。それでも一応は中のチェックをしませんと。規則ですから」

 吉見の毅然とした態度に気圧され、船長は仕方無く鍵を開けた。

 コンテナの扉が開けられ、中に吉見が入って行った。

 野島達も後に続く。

 中には、幾つもの木箱が積まれてあった。吉見は神谷と松山に目配せをした。

 二人は事前に手渡されていたバール等の道具で木箱を開け始めた。

 木箱の蓋が開けられる度に、吉見と野島達が中身を確認して行く。

 出て来たのは、筒の形をした何かの部品のようであった。開けられた木箱の中身は全て同じだった。

 船長の表情が段々と苛立ち気味になって来た。

「開けるのは構わないのですが、ちゃんと元に戻して下さるんですよね?」

「ええ、終わったら元通りにしますよ」

 七つ目の木箱を開けた時、遂にそれは出て来た。

 筒の中に幾重にも英字新聞で包まれた塊が入っていた。

 その一つを開けると、ビロードのような上質の素材で出来た袋が現れ、中には幾つものダイヤのルースがあった。

「これが、マルエス扱いの積み荷ですか?」

 吉見の皮肉を込めた物言いに、船長は無言でいた。

「積み荷リストとは違う品物ですから、これは法的には押収物品となります」

「私は何も知らない」

「その辺の事は後程きちんとお話しを伺いますから」

 神谷と松山がダイヤの入った包みを次々と袋に入れて行く。

 野島と梶は勢いづいたかのように、木箱の蓋を開けて行った。

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