明日なき狼達
何度か刃先で肉をえぐって行くうちに、それ迄とは違う感触が児玉の手に伝わって来た。指で確かめると、弾頭がひしゃげた弾丸であった。幸い、膝頭より上だったから、皿が砕けてたりとかしてなかった。
夥しい血が傷口から溢れ出ている。素早く弾丸を取り出し、傷口を塞がなくてはならない。短刀でこじりながら、何とか弾丸を摘出した時には、神谷はぐったりしていた。
まだ気は失っていない。
もう一度ミネラルウォーターで傷口を洗うと、児玉は、澤村から受け取った拳銃の弾倉から弾を抜き、短刀の切っ先で薬莢の部分から弾頭を取り外した。
薬莢の火薬を傷口に満遍なく塗した。一発分では足りなかったようで、もう一発分をそうした。
「皆さん、もう一度しっかり抑えて置いて下さいよ……」
そう言うと、児玉は傷口に塗した火薬に火を点けた。
青白く上がる焔と同時に、
「ギャアーッ!」
という悲鳴が神谷の口から出た。
一瞬燃え上がった焔はすぐに消えた。肉の焼けた臭いがする。
火薬で焼けて収縮した皮と肉を縫合し始めた時には、神谷は殆ど気を失っていた。
「晒しを下さい」
手渡された晒しをガーゼ替わりに当て、最後に包帯をきつく巻いた。
「さて、今度は野島さんの番だ」
「同じ事をするのかい?」
児玉は無言でウォッカの瓶を渡した。
「野島さんの傷は、消毒だけで大丈夫だと思います」
「あれが消毒?」
「さあ、見せて下さい」
「ウォッカ、もう一本あるか?」
再び薬莢から火薬を取り出し、野島の左手に塗した。
肉の焼ける臭いと共に焔が上がった。
左手首を右手でしっかり握り、涙を流しながら激痛に耐えた。
縫合をし、包帯を巻いて、やっと全てが終わった。
どっと疲れの出た児玉は、リビングに行き、ソファにぐったりともたれた。松山が隣に座り、ハイライトを差し出した。
潰れかけたパッケージから取り出したハイライトをくわえると、澤村が火を点けた。
「澤村と言います。松山さんには、若い頃、ひとかどならぬ世話になりまして……」
「児玉です……」
二人はそれ以上の会話が出来なかった。
尤も二人だけではなかったが……
夥しい血が傷口から溢れ出ている。素早く弾丸を取り出し、傷口を塞がなくてはならない。短刀でこじりながら、何とか弾丸を摘出した時には、神谷はぐったりしていた。
まだ気は失っていない。
もう一度ミネラルウォーターで傷口を洗うと、児玉は、澤村から受け取った拳銃の弾倉から弾を抜き、短刀の切っ先で薬莢の部分から弾頭を取り外した。
薬莢の火薬を傷口に満遍なく塗した。一発分では足りなかったようで、もう一発分をそうした。
「皆さん、もう一度しっかり抑えて置いて下さいよ……」
そう言うと、児玉は傷口に塗した火薬に火を点けた。
青白く上がる焔と同時に、
「ギャアーッ!」
という悲鳴が神谷の口から出た。
一瞬燃え上がった焔はすぐに消えた。肉の焼けた臭いがする。
火薬で焼けて収縮した皮と肉を縫合し始めた時には、神谷は殆ど気を失っていた。
「晒しを下さい」
手渡された晒しをガーゼ替わりに当て、最後に包帯をきつく巻いた。
「さて、今度は野島さんの番だ」
「同じ事をするのかい?」
児玉は無言でウォッカの瓶を渡した。
「野島さんの傷は、消毒だけで大丈夫だと思います」
「あれが消毒?」
「さあ、見せて下さい」
「ウォッカ、もう一本あるか?」
再び薬莢から火薬を取り出し、野島の左手に塗した。
肉の焼ける臭いと共に焔が上がった。
左手首を右手でしっかり握り、涙を流しながら激痛に耐えた。
縫合をし、包帯を巻いて、やっと全てが終わった。
どっと疲れの出た児玉は、リビングに行き、ソファにぐったりともたれた。松山が隣に座り、ハイライトを差し出した。
潰れかけたパッケージから取り出したハイライトをくわえると、澤村が火を点けた。
「澤村と言います。松山さんには、若い頃、ひとかどならぬ世話になりまして……」
「児玉です……」
二人はそれ以上の会話が出来なかった。
尤も二人だけではなかったが……