明日なき狼達
 もんどりうって倒れた吉見に馬乗りになった郷田は、両腕をクロスさせて吉見のスーツの襟を掴んだ。両腕を引き絞り、柔道の奥襟固めのような形で頸動脈を圧迫した。

 十秒程で吉見は堕ちた。

 郷田はそのまま吉見を裏返しにし、顎と頭頂部に手を当て力を込め、頚椎を折った。鈍い音がした。

 首が妙な方にズレ、吉見は完全に息の根を止められた。

 郷田は、部屋の中を見回し、吉見の所持品が無いかを確認した。バック以外何も無い事を確かめると、吉見の死体を抱き抱えて車迄運んだ。

 ワゴンの後部座席に死体を乗せ、再び部屋に戻り室内の指紋を念入りに拭き取った。

 ベッドの上にあった二つのボストンバックを開け、中のダイヤを確認する。

 確認し終わると、ボストンバックを持って吉見のワゴンに戻った。

 部屋に侵入してからここ迄、5分と経っていない。

 吉見の死体からワゴンの鍵を取った。

 モーテルを出て成功した事をイヤホンマイクで告げた。

「終了した。この後の始末はどうする?」

(大阪の南港にでも沈めれば魚の餌になるさ……)

 郷田はワゴンを運転し、モーテルを出た。



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