セク・コン~重信くんの片想い~
「アオイ、お前好きな人とかいるの?」
ぎょっとした顔で重信をまじまじと見つめるアオイを見て、重信は「しまった」と内心舌打った。
「なんだよ、急に?」
アオイが噛りかけのパンを持ったまま、重信の真意を確かめようと訊ね返す。
「いや……。普段あんまりこういう話アオイから聞かないから」
何気なさを装ったつもりではいた。
「まあな、オレって恋愛とかに興味無さそうに見えるんだろ? ってか俺の恋人っつったら自転車っしょ」
いつもの混じりの笑みを浮かべ、アオイはおふざけのセリフでそう答えた。
「アオイ、今は冗談とかは抜きで聞いてんの」
重信はじっとアオイの目を見つめ、少し強めの口調でそう付け加えた。
「……んだよ。やけに真面目くさった顔しちゃって」
いつもと様子の違う重信に戸惑いを隠せず、アオイは口を尖らせてぼやいた。
「で、どうなんだ?」
まだ友だち歴はそれ程長くない。寧ろ、まだ2週という短い付き合いだ。が、それでもこの短期間のうちに、確実に且つ急激に、二人の友情は深まりつつあるのは確かだった。
「いるよ」
アオイは重信とは目を合わせないまま、はっきりとそう答えた。それと同時、重信は頭を鈍器で殴られたかと思う程の強い衝撃を受けた。勿論その衝撃とは、心のダメージということである。胸がズキズキと痛んだ。恵太に彼女ができたと知ったときよりも、ずっと大きな痛みだ。
「相手はこの学校?」
痛みに堪えながらも、重信は最後まで聞くことを全うしようとする。聞きたくない気持ちでいっぱいだったが、そうはいかない。聞かずにいたとしても、きっとこれからもずっと悶々と悩み続ける日々が待っていると分かったいたからだ。
「別の学校」
アオイの言葉を聞き終え、重信は思った。
(ああ、またか)
と。気持ちを伝えないままの失恋はこれで二度目だった。