セク・コン~重信くんの片想い~
 だからこそ、重信はほっとしていた。今、アオイが目の前ではなく、電話ごしにいることに。そして、自分が彼に秘密を暴露せずにいられることに。
 ゼロから始まったアオイとの関係。ほんの数週間にして、たゆみ無い努力の結果、重信は見事アオイの友人という地位を得た。これから先、一方的な片想いは叶うことはないかもしれない。けれど、まだ今は彼との今の関係を失う訳にはいかなかった。
「だな。じゃあ俺は食い物でも持って、応援に行くことにするわ」
 本当なら飛び上がりたい程の喜びを露にしたいところだが、ここは表現下手な重信。冷静な物言いでそう答えた。
『おう、美味いもん持って来いよ? んじゃまた明日なー』

 他愛もない会話だった。けれど、重信にとっては、何より嬉しい電話だった。
 アオイからの思ってもいなかった誘いに、重信は一人鏡の前で小さくガッツポーズを決めた。

(……で、アオイの好きな人って一体誰だ……??)






< 24 / 104 >

この作品をシェア

pagetop