セク・コン~重信くんの片想い~
 そのくせ、やけに黒いエプロンが似合っていて、重信は複雑な気持ちになる。が、目の前の巨大オムライスには、思わず後ずさりそうになる。
(う、美味そうなのは確かだ。けど、このハンパない量は……)
「言っとくが、米一粒たりと残すんじゃねえぞ!」
 重信は、この時程アオイを怖い思ったことはない。頭から二本も角を生やした悪魔にさえ見えた程だ。
 おずおずとスプーンを手にとり、重信はアオイと目を合わさないように、オムライスを食べ始めた。

「---…うまい」

 重信の率直な感想だった。
 ふわふわの卵にくるまれたオムライスは、なかなかの味。

 が、完食までの道のりは遥かに遠い。そこまで腹の空いていない重信には、きっと辛く困難な闘いとなるだろう。
 小悪魔アオイは、仁王立ちしたままじっと腕組みして重信を見下ろしている。それも、微動だにせずに。その目の前で、重信は黙々とオムライスを口に運んでゆく。
 優木さんが心配そうに、何度かお冷やを注いでくれた。

 オムライスを半分程食した頃、そろそろ重信の腹が苦しくなってきた。だんだん食べるペースが落ち始める。
 ……が、それを許してくれるアオイではない。じっと黙ったまま重信を見下ろしている。

 そこからは、まさに地獄だった。
 ノロノロとスプーンを口に運び、はち切れそうな胃をなんとか誤魔化して、無理矢理食べ続ける。
 重信は、なんと一時間以上かけて、アオイの作った特性巨大オムライスを見事完食したのだった。恐ろしや、アオイ。
 優木さんは心配そうに、
「お代はいいからね」
と、付け足した。重信を憐れに思ったのだろうか。
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