セク・コン~重信くんの片想い~
 まずい状況とは知りつつも、重信も引くに引けない。
 そこへ、
「峻、やめとけ。まだ話の途中だろ」
と大寺の静止が入った。
 見たところ、どうやらこの三人の中でリーダー格なのがこの大寺ということらしい。
 ちっと舌打ちをし、小柴が唇を尖らせてもう一度机の上に腰を下ろし直した。それを見て、重信もほんの束の間ほっとする。

「井本 恵太に女ができて、つるむ相手がいなくなったという理由は分かった。が、なんでアオイなんだ? 一体何を企んでる?」
 大寺は、重信の真意を確かめようとじっと重信の目を見つめてくる。
「別に。たまたまダチになっただけだけど」
 今までこの三人のように目立つ種類の人間と関わることのなかった重信は、今回こんな人気の無い空き教室に呼び出されて、正直なところビビりまくっていた。けれど、ついているのかいないのか、重信は人より少しばかり長身な上に表情の変化も薄い為、どうもこの三人には、脆弱な二年生という風に目に映ってはいないらしい。そのおかげか、重信にとっては虚勢を張るには最適な状況とも言えた。今、どういう訳か、ここでビビッて引いてしまってはいけないような気がしていたからだ。
「あのさー、君もしかしてバカじゃん? なんの理由もなしに、急に女子のアオイちんと友情ごっこする気になったなんて抜かすなら、マジで笑えるって」
 小柴は重信をあざ笑うかのように、肩をすかして見せた。そんな小柴がどうにも腹立たしくて、
「アオイは男だ!!」
 と、気付いたときには大声を張り上げてしまっていた。
 目を丸くしている三人。さっきまでは、淡々とした態度で最低限の言葉しか口にしなかった重信が、急に感情を露わにしたことが、あまりに意外だったようだ。

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