セク・コン~重信くんの片想い~
「悪い、すぐ戻る」
恵太と美雪も、心配そうに何かを言いたそうな目を重信に向けている。
「大丈夫。先教室戻ってろ」
重信は、嫌な記憶の残るあの空き教室に来ていた。この部屋の埃っぽい臭いは、やけに鼻につく。
「昨日あんな目にあっても、まだアオイから離れる気ねぇか」
向かい合うように立つ大寺が、重信をいかにも気に食わないといったような目で見ていた。
ついさき、アオイ達の前で重信に謝ったのは、やはり嘘だったようだ。この男は、重信を殴ったことを、微塵も悪いとは思っていない。
「何言われても、俺はやりたいようにやります」
相手が怒るだろうことはよく分かっていたが、やはり重信は大寺の望み通りにする訳にはいかなかった。ここで大寺の言い分に負けてしまえば、自動的にアオイが女だと認めてしまうことになる。それに、またこないだのように、アオイから離れるような真似をすれば、今度こそアオイを裏切ることになってしまうだろう。なぜなら、アオイは重信を友だちとして信用して、自らがGID(性同一性障害)だと打ち明けてくれたのだから……。
「ああそうかよ。じゃあ仕方ねぇな」
大寺が島田と小柴に目配せすると、二人はさっと重信の両脇に移動し、がっちりと両腕を摑まえてしまった。これでは、身動き一つできない。
「忠告した筈だ、萩本。お前がアオイから離れない限り、俺はお前をぶん殴るってな!」
そう言って、大寺は身動きのとれない重信の鳩尾に、右の拳に力を籠め、重いパンチを食いこませた。
「げほっ!!」
眩暈のする痛みと、呼吸すらできない程の衝撃に、重信が腹を抱えてその場に蹲った。
恵太と美雪も、心配そうに何かを言いたそうな目を重信に向けている。
「大丈夫。先教室戻ってろ」
重信は、嫌な記憶の残るあの空き教室に来ていた。この部屋の埃っぽい臭いは、やけに鼻につく。
「昨日あんな目にあっても、まだアオイから離れる気ねぇか」
向かい合うように立つ大寺が、重信をいかにも気に食わないといったような目で見ていた。
ついさき、アオイ達の前で重信に謝ったのは、やはり嘘だったようだ。この男は、重信を殴ったことを、微塵も悪いとは思っていない。
「何言われても、俺はやりたいようにやります」
相手が怒るだろうことはよく分かっていたが、やはり重信は大寺の望み通りにする訳にはいかなかった。ここで大寺の言い分に負けてしまえば、自動的にアオイが女だと認めてしまうことになる。それに、またこないだのように、アオイから離れるような真似をすれば、今度こそアオイを裏切ることになってしまうだろう。なぜなら、アオイは重信を友だちとして信用して、自らがGID(性同一性障害)だと打ち明けてくれたのだから……。
「ああそうかよ。じゃあ仕方ねぇな」
大寺が島田と小柴に目配せすると、二人はさっと重信の両脇に移動し、がっちりと両腕を摑まえてしまった。これでは、身動き一つできない。
「忠告した筈だ、萩本。お前がアオイから離れない限り、俺はお前をぶん殴るってな!」
そう言って、大寺は身動きのとれない重信の鳩尾に、右の拳に力を籠め、重いパンチを食いこませた。
「げほっ!!」
眩暈のする痛みと、呼吸すらできない程の衝撃に、重信が腹を抱えてその場に蹲った。