セク・コン~重信くんの片想い~
「帰る前にさ、最後にあれ乗ってかねぇ?」
 アオイが見上げたもの。それは、大阪の街を見下ろす観覧車だった。


「下見てみろよ! すげぇ綺麗だぞ!! 大阪サイコー!!」
 観覧車からクリスマスの光り輝く大阪の街並みを見下ろしながら、アオイがはしゃぐ。
「だな」
 重信は正直なところ、少しほっとしていた。すっかり忘れていたけれど、自分がもの凄く高いところが苦手だったことを思い出したのだ。そのお蔭で、こんな狭い空間にアオイと二人きりになっても、馬鹿な考えを起こさないで済むというものだ。
「え、まさか反応そでだけ!? --ってか、ハギ、ひょっとして高所恐怖症とか……?」
 ほとんど下を見ようとしない重信にぴんときたのか、アオイがニヤリと笑いながら訊ねた。
「そ、そうだった……」
「そうだったって、もしかして忘れてなのかよ!? ぷっ、間抜け~~」
 アオイがゲラゲラと腹を抱えて笑う度、観覧車も小さくグラグラと揺れる。
「ア、アオイ! ゆ、揺らすな!」
 青くなってイスにしがみつく重信の姿に、アオイがまたゲラゲラと笑い出す。本当にロマンチックなイブもなにもあったものではない。
 アオイの笑いが落ち着いて、重信も下を見ないことで少し気持ちに余裕が出てきたところで、重信はアオイに言った。
「アオイの夢って何?」
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