僕の理論
死後100年
そしてそれからもう10年の月日が過ぎた。
僕は幽霊からなのか歳はとらなかったし見た目も死んだ時のまんまだった。
10年。それはあまりにも長い時間で、ここから見る街の景色も10年の間ですっかり変わっている。
僕が通っていた小学校ももうなくなっているし、僕の家の近くには大きいスーパーができている。
時間は確かにゆっくりと流れていた。
僕の所にお参りしに来る人ももう少なく、たまに来る高校の友達はもうすっかり大人になっていて見分けがつかない程だった。
みんなそれぞれ大人になっていっている。
結婚して子供が出来たやつもいたし自分の会社を持ってるやつもいた。
あれから皆は成長しそれぞれの幸せを掴み生きていっている。
僕は皆が幸せそうな様子で安心したし嬉しかった。
でもその気持ちと同時に違う感情にも包まれていた。
僕が欲しかった幸せ。物、愛情。やりたかったこと。なにもかも皆はそれを手に入れられてる。
それは生きているから。
それに比べて僕は死んでしまっている。
結婚する事も会社を持つ事も何もかも出来ない。
どんなに願ってもどんなに祈ってもその幸せが叶うわけじゃない。
生き返れる訳じゃない。
そんな事は……ずっとわかっていたけど。わかってはいるけどっっっ……。
皆が羨ましかった。
幸せそうな事が…。楽しそうな事が…。生きている事が…。
僕も生きて皆と一緒にいたかった。
せっかくお参りに来てくれているのに。
目の前でこんな事を思っている自分がひどく苦しかった。
皆の幸せを素直に喜べない自分が恥ずかしくて痛かった。
その日皆が帰った後、僕は死んでから1番泣いた。
ずっとずっと…。