僕の理論
幸せの桜
満開の桜の木で街がピンク色に染められた頃だろうか。
彼女から報告を受けたのは。
彼女は僕のお墓の前で泣きながらこう言った。
「あ、あのね、今日報告があるんだ。私今年結婚するの。
11年前、あなたが死んだ時。私ずっと泣いてた。
だってあなたの事大好きだったし大切だったから!
ずっと忘れられなくて、お参りに来てもなんか実感が湧かなくて
もしかしたらまた逢えるかもってずっと思ってた。
でも、もう私限界だよ。いないあなたを待つのは。
私 幸せになっていいよね。ごめんね…
ごめんっっ…、私ばっかり…。
ほんとにごめんねっ………。」
それから彼女がお参りに来る事はなかった。
僕は成仏できずに11年間一体なにが変わったんだろう。
僕もそろそろ進まなきゃ。ずっとここにいてはダメだ。
彼女だってきっと苦しかったんだろう。たくさんの葛藤があったはずだ。
それでも彼女は前に進んだ。
僕は純粋にその報告は嬉しかった。彼女には幸せになってほしかったから。
だから僕も、自分が死んだことを受け入れよう。
そう思った時、僕の体がどんどん薄れていく。
やっと、成仏できたんだな僕は。
もしも、もしも生まれ変われるんだとした………ら…。
薄れていく景色の中で最後に僕はとても大きな桜の木を見た。
満開の桜の花に太くしっかりとした木。
舞い散る桜の花とともに僕の全ても消えていった。