恋をしたのは澤村さん


―10年後―

「あー!遅刻する!!!」

「ちょっと葵それ洒落になんないから!」

すっかり年を重ねて28歳になったあたしは今日、大切な人の結婚式に出席する。
迎えに来てくれた楓香に申し訳ない。

濃いネイビーのドレスを着た女性が姿鏡に映る。
玄関から楓香が忙しなく呼ぶ声が聞こえて、この日のために用意した鞄をひっつかみヒールを履いて外に飛び出した。

未だにこんな姿は似合わないのでどうも仕度に手間取るというか気が進まない。
楓香の車に乗り込み待っていた楓香と望月くんに謝る。

「ごめん!!」

「別にいいよ」

素っ気なく喋る望月くんに楓香は怒ってないから大丈夫だよ。と付け足してくれた。

「それにしても、驚きだよね」

「何が?」


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