恋をしたのは澤村さん
突然のことで真っ赤になった顔を見られないよう余計俯いた。
それでも耳までの赤さは隠せなかったみたいでチラリと顔をあげたときニヤニヤと笑った澤村さんと目があった。
「……んじゃあな?…っと名前なんだっけ?」
「……葵です。田中葵っ!」
「んじゃ、またな。葵…?」
不意に優しく笑われたあたしはどうしていいかわからず苦笑いをした。
「また…!また今度!」
ゆっくりと歩み始めてあたしの横を通りすぎようとする澤村さんに声をかけた。
返事こそなかったけれど歩き始めて遠くなった澤村さんがフラリと手をあげて振った。
それだけで嬉しくなった。
もっと澤村さんの事を知りたいと思った。
澤村さんに会うことが前より楽しみになった。