恋をしたのは澤村さん
デートなんてとんでもないし
仮に誘えたとしてもあたしはあの人の隣で歩く勇気も無い…。
だってあの澤村さんだよっ!
どうみても怖い人が女の子捕まえて連れ回してるようにしか見えないでしょ。
「…どうしよう……」
黙々と動かしていた手を止めて彫刻のデッサンを見た。
酷い絵だ。酷いにもほどがある。
崩れてバランスはぐちゃぐちゃ。線を書き込みすぎて絵自体が子供の書いた絵のようだった。
「デートか……」
楓香に言われたことを口で反芻した。
私には似合わないけれど澤村さんと出掛けると考えたら心のどこかが温かくなった。