恋をしたのは澤村さん
静かに言ってから澤村さんは私の肩を押した。
「………送るよ…」
「……え?」
「もう遅いから、な?」
少し影になっていて表情があまり見えない。
だからか有無を言わせない様子の澤村さんに従うしかなかった。
「…俺、分かんないからちゃんと教えてね」
何事もなかったみたいな態度で暗い中腕を引かれて歩いた。
外灯の音が煩い。
「………ほら、葵ちゃんと歩け」
下を見ながら歩いていると遅かったのかそれともフラフラしているのが繋いでいる手から伝わったのか諭された。
「………こっち方面だったよな」
「…え?あぁ、はい」
静かに会話をする。
外灯の音と自分と澤村さんの声だけが聞こえる。