恋をしたのは澤村さん
「聞いてたけどほんとに大学に近いんだな」
「………ホントにすぐ隣ですよ?」
少しずつ見えてくる体育大の体育館を見て少しがっかりした。
もう別れないといけないんだ。
繋いでるこの手を話さないといけないんだ。
そう思うと歩いていた足が止まった。
「………………あおい?」
不思議そうに澤村さんが振り返った。
止まったあたしを気遣うかのように髪を撫でられた。
「……………」
あたしはただじっと澤村さんを見上げた。
無造作に延びた髪の毛から覗く目があたしを映してくれる。
ほんの暫くの間見つめあった。お互いが何を言うわけでもなくただじっと。
沈黙を先に破ったのは澤村さんだった。