恋をしたのは澤村さん
口を開こうとしたとき。
ポツリと頬に何かが落ちた。
「…雨だ。葵濡れるからあっち行こう」
「……はい…」
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すぐにやむと思っていた雨はあっという間にどしゃ降りに変わった。
「あー…びしょびしょだな…」
髪の毛や服から水が滴り落ちるほど濡れてしまいあたしは服の裾を軽く絞った。
それでも水を吸ってしまった服は体に張り付いて気持ち悪かった。
ここにまだ私と澤村さん以外誰もいなくて良かった。
「………澤村さん…?」
急に黙りこんでしまった澤村さんが不思議になって振り向いた。
「…………あの、澤村さん?」
顔に手を当てて座り込んでいる澤村さんがいた。具合でも悪いのかと同じ目線になるようにあたしも座り込んでその肩に触れようとした。
「………気分悪いんですか?飲み物買ってきましょうか?」
「……行くな。行っちゃ駄目」
繋ぎ止めるように手首に澤村さんの手が回っている。
ここにいて。
そういった澤村さんの声が一際大きく聞こえた。