恋をしたのは澤村さん

「なにこれ……」

紙を拾って確かめてみる。
少し歪な字で『葵へ』とだけ書いてあった。
私はこんな字を書く人を知らない。
けれど紙は確かに自分に宛てられて書かれたもののようにみえる。

……ごめんなさい。

人違いだったらどうしようかと思ったが手紙を読んでみる事にした。

ー葵へー

この手紙に気づくのはきっと帰ってからだと思う。
今日は買い物に付き合ってくれてありがとう。
そのお礼に何がいいかは分からなかったけれど俺なりに選んで買ってみた。
気に入ってくれるかどうかは分からないけれど今日一日、楽しかったよ。ありがとう

「澤村さん…」

この手紙の宛主はきっと澤村さんに違いない。
けれどこんなものをわたしの鞄にいれてる時間なんてなかったはずなのに…。

真っ白になる頭の中で澤村さんが選んだ机の上に置かれたお礼の品を見た。
淡い淡い色の金平糖。
彼は一体どんな顔でどんな気持ちでこれを選んでくれたのか。

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