恋をしたのは澤村さん
たった1日2日で終わる量とは思えないハゲお手製のプリント問題集が向かい合った机の上に置かれる。
「このハゲ…」
「なんかいったか?」
「いーえっ!すみませんでしたっ、失礼します!」
これ以上嫌みや小言を言われたりしたくなかったし早く帰りたい気もあって問題集を掴んでさっさと職員室からでた。
「田中っ!」
「……何、岩ちゃん」
「だから岩橋先生だってのっ!!
それより珍しいな。お前がイライラしてるの」
「イライラしてないもん。何、岩ちゃんじゃなくて大ちゃんって呼ばれたい?」
「こぉらっ!大人をからかうんじゃない!」
冗談半分で大ちゃんと呼ぶと岩ちゃんは困ったような顔をしてその後私の頭を撫でくりまわした。
「やめてよ、崩れんじゃんっ!!」
笑いながらもその手の大きさはあまり嫌じゃない。
「………まぁ、お前になんかあったら俺もおばちゃんに会わす顔ないからさ。あんま心配かけんなよ」
急に真面目になった岩ちゃんの顔を見て少し怯んだ。
そんな顔をされると思わなかったから。
「…だいじょーぶ!岩ちゃんまた今度家おいでよね」
ヘラりと笑ってその手をすり抜けた。