恋をしたのは澤村さん
「島津木くん、どうしたの?」
「いや、………その…」
振り向いた相手は島津木くんでいつぞやのプリント騒動を思い出す。
あれがなければ澤村さんと出会うかともなかっただろう。
そう考えると彼は私と澤村さんの恋のキューピッド的な存在になるのかもしれない。
そう考えるとおかしくてたまらなかった。
「…何、笑ってるの?」
「気にしないで…ふふっ…思い出し笑いだから」
押さえようと思っても笑いは止まらなくて、島津木くんは奇妙な物を見る目で私を見下ろしていた。
「………最近さ、どうなの?」
その言葉に私は笑いを止めて島津木くんを見上げた。
真面目さを際立たせている眼鏡の向こうの瞳は何を考えているか分からない。
でも、時おり不安げに揺れる瞳を見て私は何となく真意を読み取った。
「………気にすることないよ。てか気にしなくて良いよ。
島津木くんが悪いわけじゃないから」