恋をしたのは澤村さん

「迎えにきたって………」

「迷惑だったか？」

「…迷惑と言うよりも……あの…そもそもなんで迎えに来たんですか？」

「………なんとなく。そこまで来てたから」

言葉を濁しながら傘を傾ける澤村さんの肩が濡れているのに気づいた。
澤村さん肩が濡れてますよ、と声をかけようとした時後ろから走ってくる足音が聞こえてきた。
濡れる。とか最悪だとか喋っているようだった。

「葵、」

「え？ちょっと…！」

腕を引っ張るように引かれそのまま学校の外へと連れ出される。
澤村さんは人の目を気にするようにスルスルと駅から反対方向へと進んでいく。

「澤村さん、あの……どこいくんですか？」

「いいから」

「え、あの……」

「ちょっと静かにしてて」

少しだけきつく言われた言葉にグッと言葉を留めた。
これ以上何か言えば澤村さんが怒りそうな気がして言えなかったから。