恋をしたのは澤村さん
「………あのこずぶ濡れじゃない…」
「やだー…」
ヒソヒソとしゃべる声に集まる視線。
何もかもが深くただ深くあたしに突き刺さる。
何が嫌で何が仕方ないのか。
視線は最寄り駅を降りて駅を出るまで突き刺さる。
もうここまで濡れたなら傘はささなくてもいいや。寧ろもっと濡れて風邪を引いてしまえ。
鞄の中に入った荷物はずぶ濡れだろう。
もしかしたらケータイもこの雨で壊れてしまってるかも。
「………まぁいいか」
もう、会わないほうがいんだから。
連絡手段が残ってちゃ駄目なんだ。
そう望んだ澤村さんのためにも。
早く私が澤村さんを忘れるためにも。