恋をしたのは澤村さん


「……………ざいあぐ……」

鼻声になる声に顔をしかめながら手に乗った機械を見つめる。

38.7。
下がるどころか上がっている。
薬を飲んだ方がいいんだろうけど食欲はないし……。

仕方がないから飲み物と氷枕だけ持って上がろう。

小さなトレーにペットボトルに入ったお茶とコップ、氷枕を乗せて二階に上がった。


「……あ…」

鞄の中身が机の上にきっちりと置いてあるのが目に入った。きっと家を出る前にお母さんが部屋に入って来てたからそのときに置いて行ったんだろうな…。

ベッドの近くテーブルにトレーを置いて机の上を見る。


雨でグシャグシャになって文字が滲んでしまった数学のプリント。
少しだけ持って帰ってきたノート類。
これも滲んでしまってもう読める状態じゃないだろう。

1つ1つ手に取って確認していく。
ペラリとメモ用紙が隙間から落ちてきた。


< 60 / 122 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop