恋をしたのは澤村さん
「…なんでこんなことに…」
「……俺だって分かんないよ。だから足を踏むのやめてくんない?」
安くて曲数の多いことで有名なカラオケ店の一室であたしと島津木くんは並んで座らされていた。
何が合コンいかない?よ。
そう言って誘ったクラスメイトは最初からこれが狙いだったんだ。
断るまもなくあれよあれよと丸め込まれて連れてこられたカラオケルームでは驚いた顔をする島津木くんとご対面することになるし。
「…………本当に知らなかったの」
「知らなかったよ。てか本当に痛いんだけど!」
ヒソヒソと小声で話をしながら島津木くんの足を強めに踏んだ。その様子を見てクラスメイトの何人かが茶々をいれてくる。
「二人ってば本当に仲良しだよねぇ。今もこそこそなんかやってるしぃ」
好きでコソコソやってる訳じゃないんだけど。
と言うより、あんたらこそ楽しみすぎでしょ。
あたしは島津木くんと並んで座らされているのに。 彼女たちは自分の好みの男子とさっきからボディータッチだのなんだのしたりしている。
要はあたしと島津木くんを餌にしてお近づきになりたい男子と遊びたいだけなんでしょ。
こんな下らないことに付き合ってらんない。