恋をしたのは澤村さん

立ち上がってドアノブを引こうとしたとき入ってきたウェイターとぶつかった。

「失礼しま……うわっ!」

「えっ……つめたっ!」

ウェイターの持っていたトレーが傾きその上に乗っていたドリンクがあたしの制服にかかった。
ポタポタと滴が垂れる制服をみてウェイターは青ざめた顔で平謝りをする。
慌てて駆け寄ってきた島津木くんが自分の持っていたハンカチであたしの制服をはたいてくれたけどその手を押さえてトイレにいった。

なんともまぁ派手にかかっちゃったな。
鏡に映ったカッターシャツにできた大きな染みを見てなんとも言えない気分になった。
洗えばどうにかなるだろうけどこれは目立つよね。
これを理由に帰ればいいか、なんて考えてトイレを出たところでさっきのウェイターとその人の先輩?らしき人が走っているのが見えた。


「あぁ!先輩この子です!この子!!
俺がドリンクかけちゃった子!」

「アホ!お客様に指差すやつがいるかよ!!」

バタバタと慌ただしくやって来るその二人組に呆気に取られていると相手の上司らしき人があたしの顔を見て固まった。

「………あ、あおい」

それは澤村さんの声だった。

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