恋をしたのは澤村さん
「や、やだなー。もう終わったことだよ」
今はあたしは島津木くんが好きなんだ。
今さらやめてよ。
順調に進んでたはずなのに
「……今更、なんで今更なの」
「……何があったか知らねぇけど。
俺からしたらあいつは高校の後輩だし。
お前は大事な生徒で可愛い妹みたいなもんだからな」
「大事なら、掻き乱さないで!
やっと……やっと好きになれたのに!」
澤村さんとの事もはっきり決着をつけたつもりだったのに。
島津木くんの笑顔が浮かぶ。
あんな優しい人はもういない。
「………泣くなよ、葵。
でもな、これだけは覚えとけよ」
しゃくりあげながら泣く私の頭を撫でながら岩ちゃんは言った。
「間違った優しさは人を傷つけるぞ」
その言葉の意味がわからないほど私は子供じゃなかった。