雨と電車とチョコレート
「……頼るだけでもいいけど?」
隣から、悪魔のささやきが聞こえてきた。
「好きだ、花純。……お前が俺のことを好きじゃなくてもいい」
私はいつの間にか涙が浮かんだ瞳を、横に向けた。
彼の目は、痛いほどに真剣だった。
「……その悲しみが癒えるまで、俺のこと利用しろよ」
「利用……」
「俺でも、花純の傷を慰めるくらいは、できると思うけど?」
そう言って、彼は私の頬に手を伸ばして、そっと触れた。
ゆっくり近づいてくる顔。
そのまま目を閉じて彼の唇を受け入れた私は、きっと、弱い女。