雨と電車とチョコレート


……だから余計に、落ち込んだんだ。


どうしてわざわざ今日なの、って……。


彼のために頑張ったのに、って……。


今日、何回染谷くんの名前の横に「出張」と書かれたホワイトボードを見たか分からないくらい、信じられなくて、ショックで。


それに今日は金曜日だし、自費ででも泊まってくるのかと思っていた。


だから絶対に今日は会えないんだって諦めていたのに……。



「やー、参った参った。あっちも結構寒いのなー。俺もせっかくだから泊まってきたかったんだけど、どうしても外せない用事入っててさ。頑張って帰ってきた」


あはは、と笑いながら、私の向かいの自分のデスクにまわり、よいしょと肩から荷物を抜いて机に置いた染谷くん。


未だ、なんだか信じられない心地で彼を見ている私は、さぞポカンと間抜けな顔をしていたのだろう。



「ははっ、なんだよ。口開いてんぞ」


可笑しそうにそう言って笑うから、慌てて表情を引き締めた。


……染谷くんが急に現れるのが悪いんだ!


あんなに会いたいと思っていたのに。


あんなに気持ちを伝えようと決心したというのに。


あんなに、いなくて寂しくて、ショックだったのに。


……決心なんてもう、とっくに捨てちゃったよ。


絶対今日は会わないと思っていたから、油断してたよ。


もう知っているひとには会わないだろうと思って、化粧も直してない。



ああ、もう!
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