雨と電車とチョコレート
それから、気付いたら湊くんのことを目で追うことが多くなった。
授業中、うとうとしてたり。
朝、忘れてたらしい数学の宿題を一生懸命解いてたり。
昼休み、友達と楽しそうに喋ったり。
放課後、真剣に部活に取組んでたり。
……そんな姿を見ているうちに、いつの間にか、ただの興味は好きの気持ちに変わっていた。
私はそんなに彼と仲が良いわけではない。
友達、っていうより、ただのクラスメイト。
私が合唱部だってことすら、きっと湊くんは知らない。
「……帰ろ」
思わず凝視していた彼の下駄箱から目を離して、私は自分のローファーをもっ
て、それを地面に置いた。
そしてローファーに片足を入れた、その時だった。
「……あ」