TABOO Ⅷ~彼の腕の中~
下校時間が迫った校内には人影もまばらで、すれ違うのは部活を終え帰る生徒ばかり。
日誌のチェック欄を埋めながら、渡り廊下に差し掛かった時。
ふと体育館の中からキュッという音が聞こえ、引き戸を開けてみた。
誰だろうと覗きこむと、夕暮れに染まったコートの真ん中に男子生徒の後姿があった。
「あ、結衣さん」
爽やかな笑顔で振り返ったのは、あたしのことを「司書さん」じゃなくて名前で呼んでくれる数少ないうちの1人。
生徒会長でもある今井淳一は、爽やかで大人びた生徒だった。