蓮華〜流レルママニ〜
「葵っ!葵は休みかっ!」
ヤバい!私を呼ぶ声が!…Cクラスの前を走る私にも確かに聞こえる。
ガラガラガラ。誰かのせいで滑りの悪くなってきている教室のドアを開く。
「セーフ!!」
「セーフじゃないぞ、お前はっ!!!遅刻だ遅刻っ!!」
ヤマビコ先生が野太くほえ猛る。
「あっ、遅刻ですか!?」
苦笑いで返事をすると、蓮が冷たい視線を浴びせる。遅刻だ、と言わんばかりの目だ。
「葵っ!!お前は遅刻が多いなっ!!次に遅刻したら、名前をカメ子にするかっ!?」
ふぇ〜…
それはご勘弁を!!
皆に笑われながらも席に付く。
「朝からあんなウルサい声聞かされるんじゃ、遅刻したくもなるよねっ?」
と、フォローの言葉をくれるのは、隣りの席の由真ちゃん。
「そうだよね〜。春の陽気が台無しだよっ」
まだヤマビコ先生の 点呼の続く中、ボソボソっと答える。
桜はいいなぁ。
キレイに咲けて…
散っちゃうと切ないけど、また一年後に見せ場がある。
だから誰にも忘れられる事なく、覚えててもらえるんだよねぇ…
窓から見える桜の木を眺めて物思いに更ける。
もし子供が出来たら…
『美桜』って名付けたいな。
あ、でもこれだと女の子だけか…
…男の子なら…
………
……