蓮華〜流レルママニ〜
イヤホンから漏れていた音が止む。
「やっぱりBUMPはいいな!勇気づけられるよ!」
その顔は確かに明るい。学校では見せない、私だけに向けられる本当(真実)の顔だ。
蓮にとって私は…
唯一無二の存在なのかな…?
私にとって蓮は…
手放せない大切な存在…
蓮に彼女が出来て、
離れていくなんて…
イヤだ…
「蓮…」
「ん?」
CDを鞄にしまい、今にも帰ろうかという時―。
「キスして…」
「…えっ!?」
少し反応の遅い応え。
きっと私がこんな事言う筈がない、と耳を疑ったんだろう…
「お願い…キスして…」
私の変な雰囲気を察するも蓮は動かない。
「バッ…バカ!何言ってんだよ、千草!」
ゆっくりと蓮に迫る…
「オマエ、顔赤いぞっ!さ、さては熱があるなっ!?」
私の額を手のひらで触る…
私は…
静かに目を閉じた…
「…」
その行為に無言になる蓮。
ドキン…
ドキン…
ドキン…ドキン…ドキン…
蓮の手が、そっと私の肩へと降りる…
ドキンドキンドキンドキン…
この静かな空気で鼓動が聞こえてしまいそう…
蓮の顔が近づくのが吐息で感じる…
蓮っ
……!
「千草〜!ご飯出来たわよ〜、蓮ちゃんと一緒に降りておいで〜!」
一階から突然の母の声!
その瞬間、蓮の手も離れ…顔を背ける。
ドキン…ドキン
「ち、千草!俺もう帰るからっ!じゃあ!…か、風邪なんかひくなよっ!」
しどろもどろになりながら、顔も向けずに階段を降りていった。
「あ、オバサン、俺もう帰るからっ!お邪魔しましたっ」
一階から母に挨拶をする声だけが聞こえた。
ドキン…ドキン…
しまったなぁ〜
軽率だったかなぁ〜
明日から、どんな顔して蓮に会えばいいの〜…
この夜、
高鳴る鼓動は、なかなか収まらなかった…
一瞬の〜過ぎたる思いも〜数知れず〜ウソもホントも〜答えは一つ〜