蓮華〜流レルママニ〜
理由
―3年前。
15歳、夏―
「俺、高校には行かない」
8月中旬、夏休みも中盤を迎えた頃、いつものようにお互いの家を行き来しては2人で遊んでばかりいた時、不意に蓮がそんな事を口にした。
「何でよ〜!?高校には行かないと駄目だって!」
読んでいた雑誌を閉じると、蓮の言葉に憤る。
「だって意味ないだろ!?」
その蓮の言葉が何を意味するかが分かるからこそ、更に憤慨し蓮に続く。
「意味なくないよっ!!…高校卒業しとかないと、ロクな就職先なんてないんだからねっ!!」
「…だから…『それ』が意味ないんだって…」
「…どうして?…何で意味ないの…?」
理由は分かってる。
だけど、その言葉は聞きたくない。
だからこそ蓮に言わせ、…そして二度とその言葉を口にさせない為に敢えて尋ねた…
「…いつまで生きられるか…わかんねーだろ!?…だから勉強なんて必要ねぇじゃん」
少し言いにくそうではあったけど、その言葉を口にした。
その瞬間、
思い切り蓮の左頬を平手で、打った。
蓮は叩かれた頬を抑え、
「いってぇなっ!!何すん…」
「二度とそんな事、言わないでっ!!」
目には少し涙を浮かべながらも、強い口調と真剣な眼差しで蓮を叱咤する。
「じゃあっ、一生懸命頑張ってっ、高校を卒業してっ、大人になる前に死んじゃったら、どーすんだよっ!?…それなら、…それまで遊んでた方がいいだろっ!?」
しまった、という顔を見せながらも頬を叩かれた事で感情的になる。
「…それで幸せなの…蓮は…?」
「!!…」
「…未来を見ないなら…死んでるのと同じじゃないの…?…死に怯え生きる事が…幸せなの?」