蓮華〜流レルママニ〜

「!?…って、ちょっ!!」

―瞬間、目の前に居座る俺に驚き、飛び跳ねるように起き上がった。

そして、掛け布団を手繰り寄せると我が身を隠すように縮こまる。

ハハ…
…これじゃ、俺があたかも寝込みを襲いに来たみたいじゃねぇか…

「来たなら、起こしてよ〜!寝顔見てるなんて趣味悪っ!」


…よく言うよ。
自分の事は棚に上げて…

「いや、今来たばかりだし。それに具合悪いのに起こすのもアレかなと思って」

冷静に事の成り行きを説明する。


「蓮!あのね!言っとくけどね〜、いくら幼なじみだとは言っても、私も一応うら若き乙女なんだからねっ!?」

寝顔を見られたのが、そんなに恥ずかしいのか、人差し指を振るように俺を何度も指差しながら、忠告の言葉を投げる。

うら若き乙女…なんて今どき使わねーし。
大体千草がそんな柄かよ、とは思いながらも言い訳するだけムダなので、深く頷いてみる…

「蓮はね、女の子は私としか接してないから、微妙な女心ってやつが分かんないのよ」


ここぞとばかりに、畳み掛けてくる少し興奮気味な千草。


女心ねぇ…
それは…男の俺には分かんねぇや…
勿論、解ろうとはするんだけど、答えなんて有って無いようなものだし…


まだ何か言い足りなそうな千草を見て、起死回生とも言うべき言葉を言い放った。


「…でもさ、寝顔覗き見しちゃって悪いんだけど、千草……寝言、言ってたぞ?」


「!!!…嘘…!?」

虚として、動きが止まる。


「…いやホント。…『蓮〜蓮〜』…って」
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