蓮華〜流レルママニ〜

陽輝


パタン…。

背を向けたまま、静かにドアを閉めた。


ひとしきり、会話は弾んだものの、何かを思い詰めているのか…笑顔の向こうはいつもの元気がないように感じられた。

カラダの方は全然大丈夫だよ、と言う千草に、あまり無理せず安静にしてなよ、と声をかけ、部屋を後にした。


よし…日曜日は俺が…!


男なら男らしく、決める時は決めないとな…


背中を押されたお陰でようやく動きだしたような決意に…

胸の前で握りこぶしを作り、小さく奮起した。



トントントン。軽快に階段を降りると、玄関先に私服姿の陽輝の姿が見えた。

「おぅ。おかえり陽輝」

ポケットに両手を突っ込んだまま、葵家の家族でもない俺が軽く迎える。

「あ〜。蓮兄ちゃん!来てたんだ」

こちらも軽やかに靴を脱ぎつつ、応対。

葵 陽輝(あおい はるき)
千草の弟で、千尋とは双子の16歳高2。
一歳違いも、千尋と同じく幼い頃からの名残で、『蓮兄ちゃん』と慕ってくる。俺にとっても可愛い弟のような存在。

少し太めのEDWINのジーンズに、ベージュ色のタンクトップのインナー、その上にスカイブルーのアロハシャツ。首からは、クロムハーツのアクセサリーをぶら下げ、両耳にはピアス…

と上げればきりがないが、いつも見る姿とは違う…
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