蓮華〜流レルママニ〜
昨日の夜、確かに手渡した傘が、そのまま放置されてある。
いや、正確には一度は渡そうとした手を払われた為、天海先パイの傍に傘を置いて、
私は、その場を後にした…
あの後、どうしたのか気になっていたけど…
この置き去りにされた傘をみる限り…
…あのまま
ずぶ濡れで帰ったのかな……
……
どしゃ降りの雨の中、傘も差さずに…
ただ…海に向かって、一点だけを見つめてた…
その姿は、どこか哀愁漂い、頬を伝う雨が…
まるで涙のように見えた…
天海先パイ…大丈夫かな……
…――私が、天海先パイを初めて目にしたのは、中学一年の時。
体育館のコートの中で、華麗にシュートを決め、仲間とハイタッチを交わし、満面の笑みを浮かべる天海先パイは、2年生で既にバスケ部のエースだった。
スラリと伸びた上背に雰囲気のある佇まい、プレイ中になびく髪、切れ長でかつ優しい瞳…
そのどれもに、女子達は心奪われ、学年問わず憧れの的だった。
私もその内の一人。
でも、いつも遠巻きから他の友達と声援を送っていただけで、天海先パイは私の事なんか知らない。
話した事すらなかった。
話しかける勇気さえもなかった。
ただ…
いつも天海先パイの
背中を追いかけてた――…